お尻の拭き方。

以前輸出もされる商品のデザインにはその国に適したローカライズが必要になる事もあると書いたけど、それは国内でしか流通しない商品であっても同じだ。

以前勤めていたデザイン事務所では家庭日用品を主にデザインしていたのだけど、そこでの仕事で色々面白いことを教わった。
洗濯物を干す道具で複数のピンチが円形や角形の枠に付いたものがあるが、不思議な事に西日本と東日本ではあれの売れ方に顕著な違いがあるのだ。どちらかなのかは忘れたが、円形が売れる地域では角形が売れず、また角形が売れる地域では逆に丸形が売れない。
また表面が波形になった肉焼き用の鋳物のプレートのデザインをした時のメーカーの担当者の話では、その商品は本州では全く売れず、ではどこでビジネスするのかというと九州限定だという。
上記の話は随分以前の話なので現在ではどうかは分からないけど、デザイン作業には自分が住んでいるところでの生活体験や情報だけではカバー出来ないことが沢山ある。

はたまた。
トイレットペーパーの消費量について女性デザイナーと話をしていて、私が「これぐらい切り取って2〜3回くらい折り畳んで使うとするやろ?」と言ったところでその女性が「え"っ!そんな使い方せえへん!不潔や!」と言われ虚を突かれた。私はそれ以外のお尻の拭き方を想定してなかったので「ほな、どないして拭くねん?」と聞くと、トイレットペーパーを丸めてボール状にして拭くと言う。意表を衝かれたのでその時は根拠もなく「その方が不潔やろ!折り畳んだ方がちゃんと拭けるに決まってる!」と強弁したものの、それまで他人がお尻をどう拭いているかなど考えたことも無かったのでいたく興味をそそられて私の周囲の人々に聞いて見た。その結果男性は私同様折り畳み派が多かったが、女性には丸めて派が多かったのですっかり驚いてしまった。さらに調べるとトイレットペーパーを折り畳んで7重にしても大腸菌は紙を通過するという事実まで分かってすっかり自分の先入観を否定されてしまったのだった。

なんでこんな事を書いたのかというと。
いわゆる「社会の規範」というものに何の疑問を感じずにいられる人がいる。こういう人と話をすると「世間がそうなのだから」とか「世の中はそんなもの」という言葉がやたら出てきたりするが、その度に私は心の中で「世間って、どこからどこまでやねん!世の中はって、あんたのその貧弱な生活体験で世界を語るなよ!」と毒づいたりする。隣の人のお尻の拭き方も分からないというのに、あんたはなんでそんなに自信たっぷりやねん!