広場はいつだってこどもたちのもの。


 何年かに一度くらい見る夢がある。
夜の山々の向う側から鳥とも飛行機ともつかないとてつもなく巨大なものがゆっくりと舞い上がってきて、そして多くの人々とともにそれを眺めている夢。その景色になんだか静かに感動して、そして目覚めた時に自分が涙を流していたことに気づいてびっくりしたりする。

 だからというわけではないのだろうけど。
自分たちの街に現れた巨大な少女と象を見あげるたくさんの人々の表情を観ているとなんだか胸が熱くなってしまった。男も女も年寄りも子供も、自分たちがその日見た景色を死ぬまで忘れないだろうということがわかる顔で巨大な少女と象を見上げている。

 以前YouTUBEで偶然見つけてひとしきりコーフンしてしまったROYAL DE LUXEの"The Sultan's Elephant"。ドキュメンタリのDVDが発売されたので早速入手して観たのだった。

 ある朝街の広場にロケットが突き刺さっている(本当に広場の舗装を破壊して突き刺さってるのです!)のを発見した子供達のワクワクした顔から始まる数日間の異世界への旅。ロケットから現れ自分を取り巻く大勢の人々に目を見張る巨大な少女。本当の子供のように奔放に街を彷徨する彼女(なんと道ばたでオシッコしたり!)の後をついてあるく幸せそうな人々。夜になり眠る少女の寝息を聞きながら「今夜は眠れそうにないよ。」と呟く老人。ああ、本当に夢のような光景。

 心の底からル・アーブルの人々がうらやましく思えてくるのと同時に、日本の街でこの時間と空間を持つことが出来るだろうか、などとなんだかネガティブなことを思ってしまう自分がちょっと悲しかったりしたのでした。