「おとな」のことば。

驚いた。ある世論調査によると自民党による教育基本法改定案の内容を知らない国民が75%にもなるのだ。戦後日本の根本的な転換の始まりになるかも知れないと言うのに。

一見すると改定案も現行法もそう変わらないのではないか、という印象を受けるかも知れない。(ここで紹介されているのでぜひ現行法と改定案の両方を読んでいただきたい。またこのサイトでは図書館司書の方が教育基本法の現行法と改定案の詳細な比較を試みている。ご参考までに。)

しかしながらよく読んでみると「誰にとって」という視点の曖昧な、現行法には無かった語句が多く登場する。たとえば、「伝統」「文化」「規律」。
いずれも法律には馴染まない選択的な営為を表現する語句だ。

誰にとっての「伝統」?
誰にとっての「文化」?
誰にとっての「規律」?

「伝統」「文化」「規律」。いずれも戦後のわが国の民主主義的な来し方に批判的な論客が好んで口にする言葉。

たとえばこんな人々。

三浦朱門(教育課程審議会会長・元文化庁長官)
「平均学力なんて低い方がいい。日本が平均学力を高水準に保ったのはできもしない落ちこぼれの尻を叩いた結果だ。その結果全体の底上げは出来たが、落ちこぼれの手間ひまをかけたせいでエリートが育たなかった。だから日本はこんな体たらくなんだ。したがってこれからは、限りなく出来ない非才無才は勉強などできんままで結構。勉強などせず実直な精神だけ養ってもらいたい。落ちこぼれに金と労働力をつぎ込まず、効率よくエリートさえ育てばいい。」
(「ゆとり教育」というのはエリートを作り出すための「手段」であり、「目的」をネーミングするなら「エリート教育」ではないか?という質問に)
「だってそんなことを言ったら国民は怒るだろ?だから回りくどく言い換えただけなんだよ」(ジャーナリスト・斎藤貴男氏によるインタビュー)

江崎玲於奈ノーベル賞受賞者、教育改革国民会議座長)
「小学校へ上がる前に就学時検診ってのがあるでしょ。その時に血を採るんだ。血を採れば、人ゲノムまで解読された時代にその子の「脳力」があるかないかは解るんだ。生まれもって脳力のある子を教育して、それ以外の子は切り捨てる。教育には遺伝と環境がある。環境を重視する奴は共産党である。遺伝を重視するのは「優性学」思想の持ち主である。」(能力別教育に関しての発言)

毛利 衛(宇宙飛行士:毛利日本化学未来館館長)
「昨年、ヒトゲノム、私たちの体をつくっている遺伝子情報が全て読み取られた。それは一人一人違う。一人一人の差は、残念ながら持って生まれた遺伝子の組み合わせの差である。ある環境においては、ある遺伝子の組み合わせを持った人が伸びるということで、教育は、機会均等にチャンスを与えるが、同じチャンスを与えても出てくるものは違ってくる。そこをどう埋めていくのかが習熟度別学習であり、もっと伸びる子を伸ばす、それから、今のままではついていけない子をどう救うかということが重要だと思う。」(教育改革タウンミーティングでの発言)

西村真悟衆議院議員 民主党 大阪17区選出) 
「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す。お国のために命をささげた人があって、今ここに祖国があるということを子どもたちに教える。これに尽きる」
「お国のために命を投げだすことをいとわない機構、つまり国民の軍隊が明確に意識されなければならない。この中で国民教育が復活していく」(教育基本法改正促進委員会設立総会挨拶)

三人の大阪府教育委員
「挫折した子どもに愛の手を差し伸べる必要がどこにあるの」(女子シンクロナイズド日本代表ヘッドコーチ)
「夜行動物ちゃうわな〜人間は」(元大阪大学学長)
「バーやキャバレーじゃねーんだよ」(サントリー相談役)
大阪府立高校再編で定時制高校が半分になる件についての発言)

そして私たちの税金を使って「教育改革国民会議」なるおとな達が出した「子供への方策」

『子どもを厳しく「飼い馴らす」必要があることを国民にアピールして覚悟してもらう』
『一定レベルの家庭教育がなされていない子どもの就学を保留扱いする』
『他の子どもの学習する権利を妨げる子どもを排除する権限と義務を学校に付与する』
『警察OBを学校に常駐させる』
『団地、マンション等に「床の間」を作る』
って...。狂ってるよ...。