納豆よりもっと怖い嘘。

納豆偽情報で大騒ぎだけど何を今更。テレビの情報番組を信用する方がどうかしてる。
メディアの嘘が納豆ぐらいのことなら大量に買い込んでしまった人々を嗤うだけで済むけど、今のこの国のメディアはそれどころじゃない情報操作機関に成り下がってる。

文部省の調査結果を受けて産経や読売系列で始まった「給食費未納にみられる最近の親のモラルの無さ」を糾弾するキャンペーン。(試しにGoogleで”給食費未納”を検索してみられたし。)
エッジの効いたエピソード、例えば給食費未納なのに「ブランド品で着飾った親」「高級外車を乗り回したり、携帯電話代を何万円も払っている親」「公立学校の給食費はタダであるべき、と逆ギレする親」などを羅列して読者や視聴者の”義憤”を呼び起こすことに大成功。(このへんの”納豆を買いに走った”人たちを見ればよくわかる。)

でもちょっと内容を調べるだけでこのキャンペーンのうさんくささがバレバレ。

嘘その1。

これらの報道をみると「最近の親たちのモラル低下により給食費未納が増えた。」と誰しも受け止める。だけど文部省が給食費未納の調査をしたのは平成17年度が初めてで過去のデータは一切ない。つまり親たちの実際の行動や意識の変化をこの文部省の調査から読みとることは全く不可能なのだ。

嘘その2。

たとえば産経。
高知県の小中学校の全児童・生徒(約5万人)の給食費1年分にあたり、事態は深刻だ。」「計22億2900万円にのぼる。」「約43%の学校で未納が発生。」「実際の未納額はこの数倍に膨れあがるとみられる。」という文言で深刻さを強調しているが、調査によると未納金額は全体の0.5%、児童・生徒数では1%だ。つまり給食費未納は金額にして4〜5クラスに1人分前後、人数だと2クラスに一人未満。いつの時代にもいそうな人数じゃないか?逆に6割の学校で給食費100%完納という方がすごいと思う。
(ちなみに産経の言う「実際の未納額はこの数倍に膨れあがるとみられる。」は「16年度以前や18年度にも未納があることから」とのことだが、意味不明。誤誘導を意図してるとしか思えない。)

嘘その3。

同じく産経の記事でこの文部省の調査について”49%の学校が「未納が増えた」と答え”と書いているが、実は文部省の調査の項目には全ての選択肢に”思う”という言葉が付いていて49%という数字は未納の増加実数では全くない。また、49%とは未納の無い学校の回答も含めた数字で、未納があった学校に限れば「かなり増えたと思う」「やや増えたと思う」という回答が合わせて21.4%、残りの78.6%は「増えた」と「思って」ない。
また、記事では”未納のある学校の60%が「保護者としての責任感や規範意識」が原因とみており、69%が未納増加の原因とみている。”と書かれているが、文部省の調査は「自由記述 複数回答」なのになぜか「保護者としての責任感や規範意識の低下」と「保護者の経済的な問題」の二項目の回答しか発表されていない。
(いずれにしろ設問は「印象」を求めているにしか過ぎず、なにかの現象を担保する統計的な意味のある数字ではない。)

なぜ今こんな姑息な印象操作までしての「モラルの低下した親たち」キャンペーンなのか?
安倍晋三のいう「教育再生」が「規範意識の強化」を強調していることと無関係ではないはずだ。
納豆を買いに走りそうな人たちはよく考えた方がいいと思う。