私たちが今いるここは北朝鮮なのか?

いま開催中の世界陸上選手権は私の住処の近所にある競技場で行われている。
高額なこともあってかチケットの売れ行きが冴えないそうだが、それでも通勤途上にあるその競技場近辺はこのところ常にない人出だ。また選手達の活躍は連日メディアに取り上げられ紙面やネットを賑わしている。世界トップクラスのアスリートが躍動している姿を見るのはきっと素晴らしい体験だと思うし、そしてそれが多くの人々の幸せにつながればもっと素晴らしいことに違いない。

だけど。
連日伝えられる選手達の活躍の裏側で起こっていることを、賛否は別にして知るだけでも知っていて欲しい。

今回の世界選手権開催のために会場である長居公園で野宿していた人々が住処を破壊され追い出されてしまったことは以前書いた。そして今度は追い出されてしまった人々を支援している若者が世界選手権開催に合わせて大阪府警に逮捕され拘留されたのだ。

容疑は「道路運送車両法違反」。
規制されているディーゼル車で大阪市内を通行したために、勤め先と自宅を家宅捜索されたあげく逮捕・拘留された。それも規制されている大阪市内を通行したのは昨年のことなのだ。

これは私たちの誰もかれもが警察がその気になればいつだって逮捕・拘留出来るということだ。
あなたは友だちにCDをコピーして貰ったことがあるか?
よそのマンションの敷地や駐車場になにげなく足を踏み入れることがあるか?
ホテルの宿帳に適当な名前を書いたことがあるか?
大阪市内をディーゼル車で通行して逮捕拘留されるなら、上に書いたことだって家や職場をガサ入れされたあげく逮捕・拘留される理由に充分なる。(実際そういう理由で逮捕・拘留された人々は既に沢山いる。)

今回のホームレス支援の若者の逮捕はどう考えたって天皇夫妻の来阪に備えた予防拘留でしかない。私たちの住んでいる国は国家のやり方にケチをつける者を些細な理由で逮捕し拘留する国なんだ。国家(そして企業)主導のイベントを成功させるために、異議を申し立てる者を建前にさえならない理由で逮捕する国。ここは北朝鮮なのか?

今回の世界陸上選手権には税金が40億円以上使われる。財政難を理由に大阪市は年間約3億円の「高齢者特別就労事業」を廃止しようとしているにもかかわらず。
そしてこの選手権をゴール前で観戦出来るのは20万円のチケットを購入出来る人々だけだ。

世界陸上選手権の観戦を楽しみしている友人達へ。
素晴らしいアスリートの活躍を楽しむとともに、私たちが住んでいる国がどんなところなのかをほんの少しだけでも考えてくれたら嬉しい。