ビジネス歌謡愛唱歌集。

あまり自慢げには言えない気もするけど、私の趣味のひとつに粗大ゴミハンティングがある。
随分昔にスピーカーの銘器ビクターSX-3の美品が捨てられているのを見つけてから面白くなって、月に一度の粗大ゴミ回収日には町内を徘徊するようになってしまった。
換金性のありそうなものは早い時間にプロの方々が出没してめぼしいものを洗いざらい持っていってしまうので、私はもっぱら「突拍子もないもの」「自分では絶対買いそうにないもの」「超個人的な値打ちもの」という目線でサーチするのだけどこれがなかなかに楽しい。

で昨夜の釣果は「管理者養成学校」(別名”地獄の特訓”)の教材。
あれです。いい年をしたサラリーマンが富士山のすそ野のどこかに幽閉されて元自衛隊員の鬼教官に夜間行軍だの寒中水行だのでしごかれ、あげくの果ては度胸付けに人通りの多い駅前で「わたしはバカですぅ〜!」とか大声で叫ばされるやつ。あのセミナーのテキストとセミナー期間中に大声で歌わされるのであろう「ビジネス歌謡愛唱歌集」のカセットテープが捨てられていたので大喜びでサルベージ。

テキストは「ビジネスの心がけを戦史に絡めて説明する」などというよくある陳腐な内容でさして見るべきものは無かったけど、「ビジネス歌謡愛唱歌集」の方がすごかった。収録曲のタイトルがいきなり「セールスガラス(烏)」「地獄の友よ」「ああ夜間行進」。
歌詞カードもちゃんと付いていて、見ると「眼下を見おろしこの街並みで 男の舞を舞ってみよ」だの「戦友達にはげまされ 地獄の底をはいまわる」だの「空の水筒カチカチ鳴って 動けぬ友の肩を負う」だのホモソシアルな香り漂うフレーズのオンパレードで、まさしく軍歌。あげくは「地獄じこみのこの腕を 娑婆でためしてみようかい」って...。そんなもん試されてたまるかい!

そのあまりのアホらしさに大笑いさせて貰ったんだけど、同時にだんだん憂鬱な気分になってきた。この手のホモソシアルな”地獄の特訓”システムに若者を放り込めば社会の規律が正しく守られるようになると考える人はそこら中にいる。というかそう考える人々の方が多数なんではないかとも。「規律や道徳を身につけるために若者はすべからく自衛隊体験入隊すべし。」って主張する政治家も一人や二人じゃない。

そんなにいいものならばまず自分が行ってみれば?

追記:
「ビジネス歌謡愛唱歌集」、ご希望者があれば差し上げます。仕事がいきづまった時に聴くとヤル気が湧いてくるかも。