カメラが欲しい。

フィルムやプリントの費用を気にせずにシャッターを押せるデジタルカメラの普及でフィルムカメラ時代とは「写真を撮る」スタイルは大きく変わったと思う。家族が一列に並んで「気を付け」の姿勢で撮るような「ハレ」の気分は無くなってきただろうし、「記念写真」という概念もなんだか薄れてきたように思える。特に携帯電話にカメラ機能が付くようになってからは「写真を撮る」ということが日常の何気ない動作の一つに組み入れられてしまったかのよう。

「写真を撮る」ということが「ハレ」ではなく「ケ」になるに従って、カメラも趣味の道具ではなく日用品に近い位置づけになってきた。実際高度なセンシング技術によってフィルムカメラ時代に言うところの「カメラ素人」による手ぶれ写真やピンぼけ写真が撮れてしまうことも少なくなった。例えば電子レンジで時に料理が温まらなかったりすればただ不便なだけなのと同じように、日常を記録するカメラが失敗写真を写さなくなることはそれはそれで大いに結構だし、カメラそのもののデザインも「写真を撮る」というスタイルの変化に合わせて変わって行くべきだと思う。

ところが厄介なことに「写真を撮る」という行為には多少の緊張感を伴って欲しい、たまには失敗したい、という旧弊な人間はいるもので、わたしもその一人だ。
そういう人間からすると昨今の高度なオート化技術が投入されたコンパクトデジタルカメラは、いわばまるでダイバーが魚を針に取り付けてくれる釣り堀のようで趣味の道具としては購買意欲をかき立てられない。かといってデジタル一眼レフでは大げさ過ぎる。私は竹ののべ竿でのんびり鮒を釣りたいのだ。

リコーのGR DIGITAL IICaplio GX100はそういう私のような旧弊な人間をターゲットにした製品のようだけど、プログラムオートがメインなところがまだ物足りない。少し前に発売されたエプソンR-D1sはマニュアル撮影を前提としていて私が欲しいと思い描くデジタルカメラのイメージに割合近いが、巻き上げレバー(!)だの巻き戻しノブだのとあまりに偏狭過ぎてヘラ鮒釣り以外認めないガンコジジイみたいだ。第一写真を撮る以前に価格に極度の緊張感が走る。

じゃあどういうのがあれば欲しいのかというと、

1)アナログダイヤルによる「シャッター速度優先」「絞り優先」「フルオート」「フルマニュアル」のみ。「夜景モード」だの「スポーツモード」だのは要らない。

2)手動ストロボ+露出不足警告LED。オートポップアップストロボは要らない。

3)オートレンズバリアもなし。フィルタ取り付けネジが切ってあるとなお良い。

4)ズームも不要。広角よりの単焦点レンズにマクロのみ。

5)オプションのビューファインダーが取り付けられるホットシュー付き。(本当はファインダー内蔵が望ましいが...。)

6)ボタンは最小限。起動ボタン×1、プレビュー切り替え+画像消去用ボタン×1、露出補正ボタン×2くらい。(手動の鏡筒引き出しで起動、というのもいいなあ。それなら起動ボタンも鏡筒せり出しモーターも要らない。)

7)ボディは極端に小さくも薄くもなく。かつてのコニカビッグミニくらいがちょうどいいかな。

そしてここが肝心なのだけど、パーツや装飾の削減で浮いたコストを筐体に投入する。筐体は当然金属で、触っているうちにスレが出てくる半艶のブラック塗装なのだ。やはり趣味の道具は使ってるうちに味が出てこなければ。もちろんロゴや数字などは彫り込みにエナメル流し込み。で標準小売り価格50000円以内。

ちょっとスケッチも描いてみた。そこそこ売れると思うんだけどなあ。