チャベスという男を知った。

ブッシュの有力な支持者であるキリスト教伝道師がベネズエラチャベス大統領の暗殺を主張して波紋を呼んでいる、という記事を最近ニュースサイトで読んだ。
もうすでにキリスト教と違うやん、と思いつつアメリカの共和党政府にとってベネズエラの大統領がなんでそんなにうっとおしい存在なのか興味がわいた。
ベネズエラなんて小国がアメリカにどんな影響を与えられるのだろう?
そう思ったからだ。
ベネズエラについて知っていることといえばプロ野球ベネズエラから来日して活躍している選手がいるということぐらいだ。
何年か前に政変が起きた時もラテンアメリカ恒例の権力闘争の果てのクーデター騒ぎかと、さして興味を惹かなかった。

いろいろ調べてみて驚いた。
わが国のマスメディアによって伝えられたニュースから受けたイメージとは違う、とてもドラマティックなことがベネズエラでは起きていたのだ。

マスメディアでの取り扱いは、大統領の強権的な政治に反発し退陣を要求する反チャベス派のデモにチャベス派が発砲したため死者が出、それに反発した軍部がチャベス大統領を解任し暫定大統領を擁立したがチャベス派軍部の力により再びチャベスが大統領に返り咲いた、というニュアンスだ。
ビデオでは確かにチャベス派の人物が短銃で誰かを銃撃している様子が映し出されている。
ところが実際に起きた出来事をリアルタイムで記録していたアイルランド人たちがいたのだ。
(その内容はここここなど、いくつかのサイトで紹介されている。)

ベネズエラは世界第5位の産油国であり、またアメリカは石油輸入の20%をベネズエラに依存している。チャベスが政権を握るまではOPECの減産協定を破ってでもアメリカに石油を安定供給する、エネルギー安全保障政策面から見て便利かつ重要な国だったのだ。
また世界第5位の産油国であるにも関わらず、多国籍企業化した国営石油会社はその利益の20%しか国内に落とさず、国民の8割が貧困層のまま留め置かれていた。
先住民の血をひくウーゴ・チャベスという男が政治の舞台に登場してから着手したことは、ここや、ここなどで詳しく取り上げられているが、なんだか胸が熱くなる想いがする。
もちろん全ての貧しい人々が彼を支持しているわけではないし、また将来反対者を粛正するような独裁者にならないとは断言できないだろう。経済的な観点から彼の政策を分析している記事などでは、ポピュリストとして彼をとらえ、貧困層にフォーカスした彼の施政はベネズエラの経済発展に寄与しない失政だと指摘しているものもある。http://www.marubeni.co.jp/research/3_pl_ec_world/030808imamura2/

しかしある掲示板でベネズエラ在住日本人らしき人のこんな書き込みを見つけた時、少なくともベネズエラでは何かが前に進んでいるような気がした。

>日本のみんな
>俺がこの国に住みついちまったて
>やっていることと言えば
>確かにグローバリズムの尖兵かも知れん。
>だが、こんな俺でもチャベスのやってることには
>胸が熱くなる思いはしているんよ。
>カラカスのテアトロのコンサートなんて以前は絶対に
>金払って音楽なんて聞きにこれなかった人たちで
>いっぱいで、熱気に包まれている。