溺死した泥棒が主役の国歌だって。

実はわたくし、産経新聞の愛読者なのだ。
そのあまりのトンデモな主張故に、なにか時事問題が起きれば「産経新聞はどない書きよるんやろ?」とワクワクしてつい産経新聞のサイトにアクセスしてしまうのであった。

ということで昨日の産経新聞の記事なのだけど、なにやら「君が代」の替え歌がネットで流布されていることについて産経子がいたく憤慨しておられる。産経紙コメント常連の高橋史朗・明星大教授に至っては「正面から抵抗できなくなった人たちが陰湿な形で展開する屈折した抵抗運動だろう。表向き唱和しつつ心は正反対。面従腹背だ。」とまでおっしゃっておられる。(「君が代」を歌うことは何かに「従う」ことだったんやね。)
なんでもその替え歌の歌詞は「従軍慰安婦」や「戦後補償裁判」などをモチーフにしたもので「皇室に対する敬慕とはかけ離れた内容」であり、なおかつ口の動きがあたかも君が代を歌っているかのように見せることが出来るので「新手のサボタージュの手段として広がっているようだ。」とのこと。

サボタージュ」って...。「君が代」歌うの、いつから義務になったんじゃい!

とそのファンキーな記事にコーヒーを吹きながら思い出したのが、オーストラリアでは羊を盗んで兵士に追っかけられたあげく沼に身を投げて死んでしまう放浪労働者のバラッドが国歌の有力候補だった、という話だ。
なんでもオーストラリアでは昔からこのWaltzing Matilda(ワルスィング・マチルダ)という歌が民衆の間で国歌代わりに愛唱されていて、1974年から始まったオーストラリア国歌制定国民投票では2位につけていたそうである。なおかつ現在でもどちらかと言えばWaltzing Matildaの方が公式国歌より愛されており、ワールドカップの試合などでは観客が大合唱したりする。

ええ話やなあ〜。

作家兼ばくち打ちの森巣博氏がオーストラリアについて他にも面白い話を沢山書いていて、

・英連邦の影響を排した国旗を制定しようとこれも国民から案を募ったところ、白旗がいいだのゴムゾーリとビールの王冠(どちらもオージーのシンボルなのだそうだ。)の柄がいいだの面白い案が一杯出て収拾がつかなくなった。

・国会議事堂にはいつでも誰でも入場出来、ドレス・コードも「上半身裸は禁止」と注意書きがしてあるだけだったが、ある時Tシャツに下半身裸の美女が入場しようとしてからは「最低短パンぐらいは身につけるように。」との注意書きが加わった。

・時の首相が国家的行事に際して国歌斉唱時に国歌を歌わなかった。森巣氏が偶然ばくち場で隣り合わせた首相にその理由を聞いたところ、「歌詞を憶えてなかったのだよ。」

ええ話やなあ〜。

参考までに産経新聞が憤慨している替え歌を。なかなか良く出来てる。

Kiss me,girl,your old one.

Till you're near,it is years till you're near.

Sound of the dead will she know?

She wants all told,now retained,

for,cold caves know the moon's seeing

the mad and dead.

私にキスしておくれ、少女よ、このおばあちゃんに。

おまえがそばに来てくれるまで、何年もかかったよ、そばに来てくれるまで。

死者たちの声を知ってくれるのかい。

すべてが語られ、今、心にとどめておくことを望んでくれるんだね。

だって、そうだよね。冷たい洞窟(どうくつ)は知っているんだからね。

お月さまは、気がふれて死んでいった者たちのことをずっと見てるってことを。

(訳:5月29日付産経新聞より)

追記:
とても面白いサイト発見!
皇国の虚構
戦時中のメディアのトンデモなさを古書などから発掘して紹介しているサイトなのだけど、当時のメディアと産経新聞や「諸君!」「正論」の論調がそっくり。

追記2:
上記サイトで発掘された君が代聯盟もすごい。