選ばれし野蛮人。それはバイク乗り。

って大げさなこと言うほどでもないけど。
でも、剥き出しのエンジンとふたつの巨大なジャイロに跨って駆ける。
転んだら怪我をするか死ぬ。
それはとても野蛮な行為だ。

バイク乗りとそうじゃない人が見ている景色はきっと違う。
死ぬ時は何を思い浮かべたら微笑むことが出来るのだろうと時々想像するのだけど、一番最初に思い浮かぶもののひとつが、峠に向かってバイクを駆っている時の冷えていく空気や濃くなる森の匂いだ。

4輪バイクとでもいうべき車、ホンダ・ビートにのめりこむ前はずっとオフロードバイク乗りだった。(「○○乗り」っていうの、なんだか好きだな。)
週末になると山道で石ころや土くれと格闘し、長めの休暇が取れる時期は寝袋を積んで信州に出かける日々。ひたすらオフロードバイクにまたがっていた。「怪我と弁当は自分持ち。」がオフロード乗りの合い言葉。今でも左肘にはガラス片が入ったままだし、寒くなると膝が痛む。

オートバイで走り続けていると、ある時「バイカーズ・ハイ」とでも言いたくなるような瞬間がやってくる。意味もなく嬉しくなり、何かに向かって大声で「ざまーみろ!!」って叫びたくなるのだ。(ホントに叫ぶときもある。)
道の上には自分と自分のオートバイだけしか存在しないような静謐な孤独。その時間を持てるだけでも生きてる意味があるんじゃないか?とも思える素晴らしい瞬間がある。

最近仕事場の隣人達がバイク免許を取りだし、このところ飛び交う話題はバイクの話ばかり。
草や木の匂いを思い出してムズムズする。

20年落ちのXR250がまだ家にいる。たまには火を入れてやらねば。




(かつて愛馬だったヤマハのIT175。混合給油だったのでガソリンを入れるたびにオイルを計って混ぜなければならなかった。混ぜた後はバイクごと揺するのだ。素晴らしいバイクだったが、マフラーから飛び散るオイルにわたしの後ろを走る友人たちからは大不評だった。)