「共感」という「ものがたり」

正月休み明けからいきなり激しい嘔吐感と下痢および高熱にて数日間寝込んでしまいました。ようよう回復しゆるゆる動き回っております。
しかし放屁により誤爆したパンツを深夜に履き替える独り暮らしのオッサンの姿ほど侘びしいもんはないと小一時間(以下略)。

熱が下がらない間は仕事に取りかかる気力がわかないし、かといってテレビを見る習慣もないのでネットを漫然と眺め回っていたところ、いつも拝読させていただいてるサイトいくつかにまたがってちょっとした騒ぎが持ち上がっていた。といっても2ちゃんねるの好餌になるような騒ぎでもなくコップの中の嵐のようなものだし当事者間ではもう終わった話になってるようだけど、政治的な共感や連帯を求める人々にとってそのトラブルは少々やっかいな問いを投げかけたような気がする。

いきさつはこんな感じ。

・とあるリベラル系ブロガーAさんが「感謝や思いやりは口に出した方がいい。」という主旨を補強する為に江本勝の「水からの伝言」を肯定的に取り上げたエントリを二年弱前くらいにアップしていた。

・別のブロガーBさんが自サイトで上記ブログのURLを紹介し「”水からの伝言”などと言う疑似科学を肯定的に取り上げるのは愚かな行為だ。」という主旨のエントリを最近アップした。

・それに対してAさんが「”水からの伝言”はいわばファンタジーに過ぎないネタでありかつ二年近く前の記事をいまさら取り上げてさらしものにするのはいかがなものか?」と自サイトにて反論。

・Bさんは「疑似科学を肯定的に取り上げるのは社会の利益に反する行為だから指摘したのだ。」とAさんのサイトのコメント欄に書き込み。

・Aさんは「たとえ私のエントリに非があるとしてもそれを指摘するにはもう少し思いやりのあるやり方があるのではないか?」と反論。

・Bさんはあくまで「たとえ共感のよりしろにする話であっても疑似科学を肯定的に取り上げるのは社会的に害悪。」とコメント。

・AさんとBさんのやりとりに対して、Aさんに「連帯・共闘」を表明する「リベラル派」ブロガーの人々が「たとえBさんの主張が論理として正しいとしても、(二年前のエントリを自サイトで”さらしもの”にしたことを指して)人の”情”や”共感”を逆撫でするようなやり方は連帯や共闘を損なう行為だ。」「たとえ科学的に正しくなくとも”いい話””ファンタジー”なんだからいいではないか。」とBさんの行為をAさんのコメント欄や自サイトエントリで非難。

・そのうちAさんの「仲間」からも「”水からの伝言”はさすがに...。」という声が出て、Aさんは自分の過去の当該エントリに「”水からの伝言”は科学的に否定されている。」という主旨の注釈を付けて終結宣言。またBさんからの自サイトへのコメント等をすべて削除しアクセス禁止措置。周囲の”リベラル系ブロガー”の人々は今のところ「Aさん災難でしたね。」な雰囲気。

(※AさんがBさんのコメントを削除してしまいやりとりを正確にトレースできないのでリンクはつけないでおく。)

でAさんや周囲の”リベラル系連帯・共闘派ブロガー”のBさんに対する一連のやりとりを見ていて。

非常に個人的な感想なのだけど、”リベラル系連帯・共闘派”を自他称する人々の対応としては最悪だったと思う。
趣味や仕事での話題なら「”論理”と”感情”が対立した場合の落としどころ」ということに問題を矮小化できたかも知れないが、ことは「社会システムをリベラルなものに変えていきたい。」という人々の間の、なおかつそれを表明したいと考えてそれぞれ運営しているメディア上での出来事ではないか。

この国の人々を半世紀前に悲惨な目に遭わせ、いままたその過ちを繰り返そうとしてる人々が利用しているのは「ものがたり」だ。それは時として「愛する人を守るために死んでいった特攻隊員」だったり「殺人事件の被害者遺族の気持ち」だったり、あるいは「素手でする便所掃除」や「怪物化する少年たち」だったり。それに対して同じく「ものがたり」をもってするのではなく「知」をもって抗していくしかないと私は考えている。なぜならリベラルなあり方というのは「感動」や「畏怖」を基準とするものではないからだ。社会システムを変えていく運動において感動や共感を否定するものではないけど、人々は「ものがたり」が感動的あるいは畏怖的なものほどそれに呪縛される。先の沖縄の教科書検定抗議集会の大群衆に動かされた心は太平洋戦争での学徒出陣の記録フィルムにも動かされる心のはずなのだ。

”リベラル系ブロガー”たちは、Bさんの「知」による指摘を「共感」という「ものがたり」で拒否したのではなかったか。

追記:
多くのコメントやTBありがとうございます。こういうネガティブな話題とはいえ、かまっていただけると正直嬉しいです。

でもウンコちびったことに誰もツッこんでくれないのはちょっと寂しいかも...。