人民価格。


 わたしの住む地域はまだ月に一度粗大ゴミ回収の日がある。
その日の前日深夜には換金性のあるものを求めていろんな人々がやってくるのだが、同じく粗大ごみハンティングを趣味とする私も入り交じり時々世間話に花が咲く。

 そんな話の中で教わったのが、粗大ゴミの中で換金商品として一番人気があるのが意外にもミシンであることだ。それも求められるのはコンピュータ制御でたちどころにいろいろな縫い方が出来るというような最新の商品ではなく特定のメーカーの特定のモデルに限るそうで、なぜならそのモデルがひときわ丈夫で故障が少なくかつ修理が容易であるからだそうだ。言い換えればエンドユーザーがそのことを良く知っているということでもある。

 実は私は中古ものが大好きで、よほど消耗の傾斜の激しいものは別にして耐久消費財の多くを中古で購っている。もちろん財布が薄いということもあり、また現行製品に欲しくなるものがないということもあるのだけど、中古商品の価格は消費者の価値観が大きく反映されたものだから、ということも理由のひとつでもある。中古品の価格はいわば「買う方が価格を決める」商品である。製造者や流通者がいかにセールスプロモーションでモノの価格をふくらませようとも、中古市場に流通したとたんその思惑から離れ自由な値付けの対象となってしまう。

 まあ有り体に言えばわたしがしみったれなだけかもとも思うが、ちょっとだけカッコつけさせてもらえるなら、中古の品物を購うことはお仕着せの流通に対するささやかなレジスタンスであると言っておこう。

 写真は最近の粗大ゴミハンティングの収穫。正確に言えば知人の伝手で廃棄されるものをもらい受けてきたもの。ものすごい丈夫なクランプが付属していてテーブルなどに取り付けられるようになってる(歯無しだったので手近にあった歯茎をコーディネイトしてみた)。医療系の学生が実習で使うものらしいが、ホントにこんなハードコアな紳士を相手に歯石を取る練習してんのかなあ?分厚いアルミダイキャスト製で、無垢の金属塊に弱いわたくしとしては見逃すわけにはいかなかったのだった。いまデスクの両側で私と一緒にMacを覗きこんでいます。どなたかお一人いかが?