ハヌマーンでスッキリ。


 タイで放映されていたウルトラマンが私たち日本人から見ると「なんか違う...」っていうのは有名な話。根本的にウルトラマンと関係無さそうなキャラクターがウルトラ一家の一員として大活躍するのである。その名も「ハヌマーン」。

 感覚がグラグラさせられるもの好きな私、偶然入手したこのタイ製ウルトラマンのビデオを見ては感覚の揺らぎを楽しんでいたのだが、とある方の「なんでタイでハヌマーン?」という疑問に「そういえばハヌマーンってヒンドゥー教の神様だよなあ。タイの人々ってほとんどが仏教徒じゃなかったっけ?なんでハヌマーン?」とわたしの頭にも?マークが浮かんだのだった。

 そこでGoogle先生に聞いてみたら「ジャアク商会/タイランド旅行案内所」というサイトにこういう記述があるのを見つけた。

タイ仏教とバラモン教とのかかわり

 詳しくはリンク先を参照いただきたいが(この”ジャアク商会”って他のコンテンツもなかなか面白いです)、要は仏教と王制を両立させるために支配層が隣国クメール帝国よりバラモン教(古代ヒンドゥー教)を導入したのだと言う。仏教は突き詰めれば平等思想につながる教えであり絶対王制の基本である選民思想世襲思想を弱体化するおそれがある。そこで現人神として王が君臨する隣国クメール帝国から民衆支配のヒントをいただき人為的にバラモン教の導入がなされた、という説だ。ゆえに現在のタイ王朝でもバラモンの儀式が維持され民衆のあいだでバラモンの神であるハヌマーンの人気が高いらしい。

 もしこの記述が妥当だとするなら、元々反バラモン思想より生まれたはずの仏教が再度バラモン教と融合させられ民衆支配の道具の役目を負わされて来た歴史の皮肉も興味深いが、わたしがより興味深く思ったのは民衆がなぜバラモン教を受け入れていったのかという点だ。支配者が平等思想より選民思想を選ぶのはわかるけど民衆がそれを受け入れたのはなぜか?

 ここからはわたしの戯れ言になるけど、仏教より貧者に救いが少なく見えるバラモン教が民衆に受け入れられていったのは実は「スカッとするから!」なんじゃないだろうか、なんて。仏教って結構辛気くさい宗教のように思えるのですよ。56億7千万年後に弥勒衆生の救済に現れる、なんてめったやたらにのんびりしているし、ライフハックみたいなこと言ってくれるわけではないし。また叙事詩的な性格を持つ教典があるわけでもなし(お釈迦さんお腹こわして亡くなったんですよね)。

 それに比べてラーマヤーナの爽快なこと。
英雄が全世界を飛び回り、闘い、傷つき、そして愛を交わす。登場人物が戦士や王族だけで病人や貧乏人などが出てこないとこも辛気くさくなくって最高!中でも主役ラーマ王子をサポートする機智に富んだ戦士として描かれるハヌマーン、悪い奴をばったばったとなぎ倒し爽快なことこの上ない。孫悟空のモデルになったという説も頷ける。そりゃ明日の仏教より今日のバラモン教だろ!

 まあ実際はそんな単純な話ではないだろうしなんの検証も伴わない戯れ言ではある。
ここんところの大阪府知事の言動に対して「スッキリした!」「わかりやすい。」などという感想をネットのあちこちで見かけることが哀しくてつい思索の方向がそっちに向いてしまいました。スッキリした気分の後に大阪府民に残るものが現代のバラモン教でなければいいのだけど。

 ウルトラマンだけではなく仮面ライダーも「なんか違う...」のだが、その辺はまた後日。