「Corteo」観ずして死ぬなかれ、って言ってもいい?

Cirque Du Soleilの新作「Corteo」のDVDをやっと観ることが出来た。

「Corteo」とはイタリア語で「葬式の行列」を意味するらしく、ベッドに横たわり死にゆく老クラウンのシーンから始まる。舞台で起きる出来事は老クラウンの回想シーン、という設定のようだ。
殆ど素顔とシンプルなコスチュームで演じらていると聞いていたのでCirque Du Soleilの「異形の人々による異世界感」に惹かれる私としては世界に入り込めるかどうかいささか危惧したのだが、全くの杞憂だった。

書き割りや衣装、そしてこぢんまりとした円形舞台は近世ヨーロッパのサーカス小屋らしき設定で、音楽はアコースティックな演奏を中心に演者たちのコーラスがからむ。
演目もVarekaiなどで見せた大がかりな器具を伴うものは目立たず、ジャグリングやハイワイヤなどの伝統的な体技を中心としたもので構成されている。

サーカス小屋らしき設定、といってももちろんものすごい技術でとんでもなく緻密にプログラムされたステージなんだけど、プログラムに沿って進められているといった段取り感を全く感じさせないのは相変わらずの素晴らしさだ。また演者の体技もさることながら、介添え役も観るに値するのがCirque Du Soleilのショーだ。ハイワイヤの演者に次の演技に必要な道具を手渡すのが天から舞い降りて来た天使だったり、またステージの隅っこで漫然と見物してる人物であってもそれがステージ全体を息づかせるポイントだったりするのだ。

演目は普通のサーカスでも観られるものが続くし、またそれらの技術も例えば中国の雑伎団やロシアの国立サーカスなどに比べて突出してるわけではないとおもうのだが、私がここまで惹かれて止まないのは何なのだろうかと考えると、やっぱり私にとってCirque Du Soleilのステージは「フェティッシュ」で「エロティック」だからだ、ということになる。時に裸体にさえ見えるコスチュームやボンデージなデザインの衣装、はたまたドラグクイーンにも見えるメイクにハスキーボイスなシンガーの起用である。どう考えたってショーを創っている奴らは確信犯だ。家族でも楽しめるサーカスを「フェチ」と「エロ」の目線で観るなんて、とマジメな人からは非難されそうだけど、元オリンピック選手なども含む素晴らしく美しい肉体を持つ人々がフェティッシュなコスチュームとメイクで極限の体技を披露するのを「エロティック」と言わずしてなんという?Cirque Du Soleilは「フェチ」で「エロ」だからカッコいいんだよ!と力説しておく。
ともあれ「Corteo」、気球にぶら下がったすごく小さい女性演者がクラウンの手から肩へ、そして観客の手から手へと空中を渡り歩くシーンの美しさに私は涙ぐみそうになったのであった。

それにしてもジンタを聞くとノスタルジックな気分になるのはなぜだろう。サーカス小屋なんて行ったことないはずなのに。


(イメージの引用はこちらから)

追記:
オープニングだけですがここで観ることが出来ます。フェチ具合はこの辺とかこの辺の"Visionnez un extrait!"でどうぞ。