音楽を「買う」ということ。

先週末も二日にわたって大いにライブを満喫したのだが、出会った音楽の善し悪しに関係なく「音楽を金で買う、ということはどういうことなんだろう?」という疑問がいつも頭をよぎる。

先のライブの入場料は二日で10000円近くした。決して手軽な料金ではないと思う。
KONONO No.1渋さ知らズも素晴らしいステージを見せてくれたが、路上生活者は多分聞くことは出来ない。失業してる人や生活保護を受けている人だって同じだろう。
街角でふと耳にした曲をもう一度聴きたければ、CDか有料ダウンロードサイトのデータを購入する以外の方法は難しいだろう。テレビやラジオで無料で聴けるじゃないか、と言われるかも知れないが、それらの楽曲だって商品に上乗せされる広告宣伝費という形で私たちは知らない内に代金を支払っているのだ。またお金を支払わなければそれらを再生する機器は手に入らない。

わが国では売春は犯罪になる。また多くの人はセックスという情動的な行為に金銭の対価が発生することに抵抗があるだろうと思う。
では音楽を売り買いするのはなぜ犯罪にならず抵抗も感じない?
美しい、あるいは刺激的な音楽を聞いて感動することとセックスはどう違うのだろう?

60年代70年代のフォークシンガーと呼ばれた人々の中にはテレビに出ることやプロダクションに所属することを拒否した人が多くいた。テレビに出ることやプロダクションに所属することを売春と同じ行為だと考える人もいた。それは自分の作った音楽そのものに関心がない人々にも利益をもたらす商品として流通することに対する素朴な嫌悪感の表明だったのだろう。

今ではそんな素朴なレジスタンスを目にすることも少なくなり、他の商品とのタイアップなどという抱き合わせ販売も抵抗無く受け入れられるようになってしまった。

お金を支払うことが嫌なんじゃない。
ただいつも頭に引っかかってしかたないのだ。