ジョブスのイタ電。

あれからずっと鈴木常吉の歌声に浸ってる。冴えない風貌の、少々音程も頼りないおっさんの歌がなんでこんなにいいんだろう?透き通った侘びしさがたまらない。孤独を愛する全てのおっさんおばさんにおすすめのCDです。鈴木常吉の「ぜいご」

話は変わるが、Apple Computer改めAppleからiPoneが発表された。
少し前にiPoneの商標を持つどこかの携帯キャリア会社がその名前で携帯端末を出した、というニュースをどこかで読んでいたのでAppleからはその名前では出ないと思っていたのだが、商標については見切り発車で出したらしい。
iPoneのハードやソフトについてはあちこちで取り上げられているだろうから改めてここでは言及しないけど、iPhoneが発表されたMac World EXPOでの基調講演でスティーブ・ジョブスのやったことがとても印象的だった。

iPhoneiPhone上で走るGoogle Mapの表示ポイントへ直接電話出来る機能を持つ。その機能をデモンストレーションするために、ジョブスはGoogle Mapに表示されたMac World EXPO会場のすぐそばのスターバックスにイタズラ電話をかけたのだった。「4000人分(講演参加者の数)のラテの出前を頼む!」って。

パーソナル・コンピュータの創生期を支えてきたのは今なら「ハッカー」「クラッカー」と呼ばれる若者たちだった。彼らが最初に挑戦したことの一つが「電話のタダがけ」や「イタズラ電話」だ。ジョブスも、巨大通信産業であるAT&Tのシステムの隙をついて彼らの鼻をあかすことに智恵を絞っていた「無軌道な若者」の一人だったのだ。(そういえば”キャプテン・クランチ’って呼ばれてた”タダがけヒーロー”もいたね。)

すっかり巨大企業となってしまったAppleだが、それでも今だに思い入れを持っているユーザーは「ジョブスの海賊旗」や「スカリーの砂糖水」の”ロック”なエピソードを知っているだろう。
そんな時代の「学生気分の漂う会社」の匂いが現在のAppleにもまだ微かにでも感じられるから、わたしのような古いMacユーザーはAppleを見限ることがなかなか出来ないのだ。

ジョブスのイタズラ電話にはそんな「学生気分」が漂っていた。たとえそれが周到に練られた演出だったとしても。

パソコンや電話機は生産効率を上げるための道具だが、コミュニケーションを手助けする道具でもある。
個人的に思うことなんだけど、人と人をつなげる道具を創る奴らはやっぱり”ロック”なノリでいて欲しい。
企業内の”ロック”なノリやグルーブを「不真面目だ!」って怒る人が増えてきたように見えるこの国からは、当分Appleは出て来そうにないかな。みんな「プロジェクトX」大好きだし。(ちなみにわたしはプロジェクトX大嫌いです。)