セアカゴケグモと入道雲。

たまには肩の力の抜けたことでも書こうかな。

商業デザインは、発注者に出来上がったスケッチなり企画書をプレゼンテーションする時が仕事のヤマのひとつなんだけど、そのプレゼンテーションが一発で通ることは少ない。たいがい色々なダメ出しを食らってより練り直された案へと昇華されていく。デザイナーにとってそのダメ出しが納得いく場合もあれば、「???」と首をひねるダメ出しもあったりする。

随分昔に請けたソフトウェアのインタフェイスデザインの仕事での話。
担当者レベルのプレゼンテーションでは大いに好評を博し、あとは社長の最終決裁を待つばかりになった時に当の社長からダメ出しが出た。
「ココにホコリが溜まる。角は丸くないとアカン!」
ディスプレイに表示されるユーザインタフェイス画面にはボタンや入力窓や表示窓が沢山設定されている。その表示用や入力用の窓が直角だと「掃除しにくい気分になる。」とのことであった。そんなこと言われても...。

友人のグラフィックデザイナーが食らったダメ出し。(T君、差し支えがあったら言ってね。)
随分苦労して新聞広告のラフを作成し自信を持ってプレゼンに臨んだところ、クライアントの担当者に「この広告の掲載紙がどんな地域に配布されるのかわかっとるのか。もっと神経を使え!」とダメ出しを食らった。当時日本にはいないはずの「セアカゴケグモ」という毒グモが国内で発見されちょっとした騒ぎになっていて、その広告の掲載紙は「セアカゴケグモ」が見つかった地域に配布される予定だったのだ。
友人がデザインのモチーフにしていたのは青空に湧き起こる入道”雲”...。

それを聞いたわたしは大笑いしたのだけど、友人にしたら笑い事じゃなかっただろう。徹夜して作成したデザインラフがそんなダジャレで没になったんだから。
もっともクライアントも消費者から理不尽なクレームを食らわされ続けてきたあげくの「石橋を叩いて渡る」だったのだろう。

クレームと言えば、わたしはよくクライアントにユーザーから来るクレームの内容を聞く。自分のした仕事が気になるのはもちろんだけど、クレームの内容によっては消費者がどんな製品を望んでいるのかを知る手がかりになる。色々聞いたクレームの中でエッジの効いたやつをひとつ。
「お宅の製品の上に乗って棚の上の荷物を取ろうとしたら製品が潰れた。新しいのと替えてくれ。」というクレーム。さすがに丁寧にお断りしたそうだ。「鳥カゴは踏み台の代わりにするものではありません。」って。